Japan Association for Medical Informatics

[2-B-3-4] 精神科医療の遠隔化は診療所、精神科病院、総合・大学病院に普及し得るか

岸本 泰士郎 (慶応義塾大学精神神経科学)

 精神科の診療は多くの部分が患者との会話で占められるため、テレビ電話を用いた遠隔医療がなじみやすい診療科である。実際WHOの調査によると、精神科は放射線科、病理診断科、皮膚科に次いで遠隔医療が利用されている、とされる。通常の対面診療と比較した診断精度、治療効果、患者満足度などに関するエビデンスも確立されており、本邦でも演者らのグループを中心に複数の報告を行ってきた。特に日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究として2018年3月まで行われたJ-INTEREST研究では、二つの医療機関を繋いで行う認知機能検査、病院と患者宅を繋いで行う認知行動療法など、複数の診療セッティングや診察内容での検証を行い、高い診断一致率、患者満足度などを確認することができた。
 このように、しっかりとしたエビデンスがあり、導入ハードルもそう高くないと思われる精神科の遠隔医療が日本の医療現場に普及していくかどうかは、今後のわが国の遠隔医療の発展を占ううえで重要と思われる。普及のための重要な要素は診療報酬であろうが、それ以外にも通信クオリティの改善、各精神科医療機関(診療所、精神科病院、総合・大学病院)の診療特性への対応可否、短時間で多くの患者をさばかねばならない日本の医療がどう変わっていくかなど、他の要素も大きいと考える。発表では、J-INTEREST研究の成果を踏まえ、精神科診療を行う種々の医療機関にとって、遠隔医療がどのような役目を果たし得るか、またそのためにはどのような準備が必要かを議論する。