Japan Association for Medical Informatics

[2-C-1-1] 医療情報技師に求められる知識,役割,そして存在意義

大沼 洋則 (北海道医療情報技師会・手稲渓仁会病院)

 医療機関にてコンピュータ化されていくシステム化範囲がどんどん広がっている昨今、院内SEと言われる情報部門担当者の配置は欠かせなくなっています。
 また、複数の医療系ベンダーのSI担当者や保守担当者が医療スタッフと関わる機会が多くなってきました。医療機関という現場では単に「システム化」という表現でシステムを導入・運用できるほど単純な業務内容ではありません。一般の営利を目的とする業種でのシステム化とは異なり、治療が必要な患者が医療機関で関わる範囲やアウトカムが多種多様な状況を患者情報や診療記録として扱いますが、規模も形も異なる複数の医療機関が同じようなパッケージと呼ばれるシステムを導入し、適切に管理、利用することが望まれます。
 もちろんシステム化には相当の費用が必要なため、そのシステムを導入した現場は必ずしも全ての希望が叶えられ、100点満点の運用が達成できるものでは無く、限られた予算の中で最適化できる範囲をいかに広げられるかが重要です。そのシステム化の最適なバランスを取るのが「医療情報技師」と言われる認定者が医療現場に関わり、やらなければならないタスクではないでしょうか。
 ここでいう「最適なバランスを取る」ということが実はなかなかハードルが高く、単に紙伝票で運用している部分を画面に登録することで「システム化」と勘違いしているようなシステム導入の提案シーンが見受けられることがあり、このことは逆に現場へ余計に負荷をかけてしまうようなシステム化となってしまう状況となります。
 医療情報技師はこの最適なバランスを取るべく現場業務を広範囲に理解、俯瞰しパッケージベンダー担当者(もしくは自社開発部門)へ適切に必要な運用の情報を提供することや予算の範囲でシステム化不可能な範囲も含めて運用提案を現場へ理解してもらう必要があるのです。医療の現場ではその役割を医療情報技師といわれるスタッフに期待しているのです。