Japan Association for Medical Informatics

[2-D-1-1] 医薬品安全管理から見た病院情報システムの変遷と今後

高橋 弘充 (東京医科歯科大学医学部附属病院)

 病院情報システムの進展は国家戦略として策定された「e-Japan戦略Ⅱ」(2003年)による患者基点の総合的医療体制整備の一環としてオーダリングシステムの整備に端を発し、やがて更なるITによる医療構造改革の流れの中で電子カルテシステムの開発と普及へと進んできた。一方で医療安全確保においては医療法等の一部改正により医薬品安全管理責任者の配置が義務化され、さらに平成29年特定機能病院の承認要件変更により医薬品安全管理責任者の責務についても更に高い水準を求められるようになった。このような医薬品安全管理に関わる管理体制と実施においては人的リソースだけでは解決し難い課題があり、病院情報システムや薬剤部部門システム等、IT化の役割が重要なキーワードである。病院情報システムの特性として、継続性を維持しながら休むことなく新システムへと移行させることが宿命であり、抜本的な構造変化に対応しにくい特性のため、データ移行・データ変換の問題から実現できないことも多い。今後AI機能など最新技術による新たな展開も期待されているが、それを待つだけでは変化の速度に追い付かない状況でもある。また、ベンダ等から提供されるシステムは一律ではなく、システムによりその完成度は異なる。薬剤師等医療者に多大な時間強いる持参薬管理や内服・注射併用が不完全な抗がん剤レジメンシステム、病名・患者状況に応じた禁忌・適応外に対応できない処方チェックシステム等未だに解決できていない問題を含みながら運用されているシステムも多い。また、内服処方箋の記載方法の標準化に準拠したオーダシステムへの移行や電子版お薬手帳、電子処方箋等新たな課題にも直面している。
 地域医療が叫ばれる時代に向け、今後は自病院でのシステム対応という個別対応から病院を超えて、ベンダを超えて対応する体制が重要な課題である。