Japan Association for Medical Informatics

[2-D-1-2] 職種による与薬・服薬関連用語の認識揺らぎをどう解決するか?

瀬戸 僚馬 (東京医療保健大学)

 医薬品の適正利用には、これに関わる職種が共通言語で会話することが大前提である。とはいえ、与薬・服薬関連用語に限ってみても、そこで共通認識を持つことは必ずしも容易でない。
 例えば、医師が注射オーダで指定する「10時」という時刻がある。これは、例えば10時30分に手術室に入室する患者に必要な注射であれば「10時±5分」あたりに投与すべきであろうが、これが単体で使用する抗生剤であった場合、実質的な意味は「10時±1時間」であると看護師は理解する。この±は「空気を読む」ことで理解されるし、そもそも注射オーダで指定される時刻を厳密に解釈した場合、そのオーダは実行不可能なものとなってしまう(例えば10人の患者に対して10時0分0秒から59秒の間にもれなく投与することは不可能である)。
 電子カルテ普及の歴史では、例えば内服薬は3点認証の対象から外れたり、注射オーダの中でもインスリンだけは実施入力の対象から除外されるなど、予約・服薬のプロセスは、必ずしも厳密に運用されているとはいえない。その原因の一つは、与薬・服薬関連用語の認識の揺らぎにあると筆者は考える。
 ただ、職種が異なれば役割も異なるので、一定程度のスコープの違いが生じるのは当然だ。そこを無理につなぐ必要もないのだが、医薬品を適正利用するという点では最低限の整理は必要である。揺らぎによる課題を省察し、その改善法を提案したい。