Japan Association for Medical Informatics

[2-D-2-1] 医療連携に必要な医療情報と医療連携レベル・患者個人レベルでのICT格差

高柴 正悟 (岡山大学医歯薬学総合研究科病態制御科学専攻)

 大学病院では歯科医院や医科との間で医療情報を交換する場合が多いが,その際に得る情報の粒度と深度になかなか満足感を得ることができない現状がある。紹介の意図は伝わるが,診断に繋がる客観的な情報(画像検査や臨床検査等)が欠落していることが多い。
 医療連携のために紹介先が必要とする医療情報を考える。特に外観に見えず,患者視点での症状で表現されやすい「歯周病」では,通常の紹介状に加えて,初診時と紹介時の画像検査(X線検査や口腔内写真等)があると非常に有用である。この画像を紹介状に添付しづらい理由は,多くの歯科医院で使用されるレセプトコンピュータに,画像情報が連携していない環境である。CD等で送られるCBCT画像情報でも,判断を決定づけた断層写真が特定されていない。各システム間の院内連携がスムーズになると,医療機関間の連携も変わる。
 一方で,医科歯科連携では,医科からの紹介状に血液検査等の情報が添付されることが多く,両科で広く理解される。しかし,歯科からの医療情報には医科の診療時に理解されるものが元々少なく,画像検査結果であっても対照の健側も示すことが望まれる。
 以上のような医療情報は,粒度と深度に加えて精度も伴い,さらには個人情報も厳密に管理されている。しかし,患者個人が管理する医療情報には,通常の診療時の説明に加えて,歯科疾患管理や追加説明文書として印刷や手書きの資料がある。ある意味でPHRであるので,患者が自ら管理する個人情報として医療連携の現場でも使用可能である。これらの医療情報を紙ファイルではなくスマートフォン等で患者が持ち歩くことが可能になると,患者の健康意識向上に資する可能性が高い。さらに,堅牢性を持つが高価である医療情報連携システムを補完することも可能となる。
 今回は,医療現場と患者本人にとって必要な医療連携を考え,両者で用いるICTの「格差」を考える。