Japan Association for Medical Informatics

[2-D-3-2] 口腔診査情報の地域医療ネットワーク連携

青島 潔 (和歌山県健康対策課)

 和歌山県では平成13年に和歌山県歯科医師会会員の協力を得て全市町村の住民を対象に節目歯科健診を開始し、40歳、50歳、60歳、70歳の節目を迎えた県民が年平均で約3000名受診してきた。また、平成27年度に対象範囲を後期高齢者に拡げたところ、80歳以上の約3500名が加わって、現在では年間約7000名の口腔診査情報が蓄積されている。南海トラフ巨大地震に備えて、歯科医療機関に電子的に蓄積されている口腔診査情報に加え、節目健診や後期高齢者健診の受診者情報を収集しておくことは重要である。これは、2011年の東日本大震災で、身元不明者の個人識別に歯科的特徴が利用され、DNA型による識別等より迅速かつ有効であることが確認されたことが背景にある。
 また、和歌山県をカバーする地域医療ネットワークである「きのくに医療連携システム青洲リンク」は、災害が発生した場合でも、和歌山県民の大切な診療情報を守り、迅速かつ適切な医療サービスの提供を行うことを掲げて発足し、現在12病院、29診療所(歯科を含む)、106薬局が参加している。
 このような状況で、平成30年度に厚生労働省では、自治体や教育機関で発生する口腔診査情報の収集も視野に入れた実証事業を計画し、日本歯科医師会がこれを受託した。和歌山県はこの実証事業のモデル地域に選ばれ、1)医療機関対象の事業、2)節目・後期高齢者検診対象の事業、3)学校健診対象の3事業を通じて、青洲リンクとの情報連携を計画している。
 この事業は、現在進行中のため結果を明示することは難しいが、本シンポジュウムでは、これまで電子的に蓄積してきた口腔診査情報を有効活用するための事業に関して課題を整理、関係者とディスカッションを行う。