Japan Association for Medical Informatics

[2-E-2-2] ちょうかいネット継続運用のための運営コストと活用指標からみた考察

島貫 隆夫 (日本海総合病院 病院長:山形 ちょうかいネット)

地域医療情報ネットワークを継続的に運用するためには様々な課題がある。このたび、費用、運用、コンテンツの面から検討を加えたので報告する。
ちょうかいネットは山形県庄内二次医療圏で運用されている地域医療情報ネットワークである。
地域人口279,506人の急激な人口減少地域であり、少ない医療資源を効率的に活用するため、2011年4月より運用を開始した。システムはエスイーシーのID-Linkを使用。開示施設は5病院、1地域電カル、1検診センターである。参照施設は、病院、医科・歯科診療所、調剤薬局、老健、介護事業所、訪問看護ステーションの計122カ所に及ぶ。職種による参照制限は設けていない。
 導入費用は全体で115,100千円、うち地域医療再生基金より100,014千円が充当された。既に3病院でリプレイスを行なっており、総更新費用は12,065千円で、開示病院で負担した。年間維持管理費用のうち、総データセンター利用料が年3,888千円で、各開示施設負担である。協議会運営費は昨年度1,030千円で、これは行政負担となっている。参照施設の会費・利用料は無料。患者の登録作業は事務局で全てを担当している。
 2018年3月末の実登録患者数は32,401人で地域人口の11.9%に相当する。アクセス件数、コンテンツ、施設や職種について解析したところ、利用は多職種にわたっており、医師記録、検査、処方、画像の利用が多く、医療・介護連携の情報プラットフォームとして活用されていた。
医療情報ネットワークの継続性に関しては、運用事業費、活用状況の面から評価する必要がある。費用対効果の面では、活用が進んでおり投資効果は比較的良好と判断したが、利用施設が限定的であることが課題である。現在は利用機関が経費を負担しているが、医療情報共有を社会インフラと考えれば、公益性が高いことから、行政や保険者の関与がより求められるべきものと考える。さらに質向上とコスト節約のためには、医療IDの導入、永続性のある基盤整備、地域電カルのような双方向のシステムが不可欠と考える。