Japan Association for Medical Informatics

[2-E-3-4] 多機関分散データの統合的利活用による生活安全の課題把握と課題解決への試み

北村 光司 (産業技術総合研究所)

 子ども、高齢者、障がい者などの生活機能変化者に対する生活安全が強く求められている。本研究では、多機関分散データの利活用技術を、データを保有する現場や機関や、課題解決へのアクションを取れる技術者やデザイナーなどと連携し、具体的な課題に取り組みながら実証的に開発することを目的としている。これまでに、消防庁、日本スポーツ振興センター、複数の医療機関、保育所・小中学校などと連携し、分散された傷害関連データを統合的に活用する技術の開発を進めている。
 具体的な応用の1つとして、学校環境での安全について取り組みを進めている。複数の学校に分散する事故データを、学校を特定されないまま仮想的に統合し、統計的な分析を行ったり、類似状況で他校で発生した重症事故情報を共有する仕組みを開発した。また介入の効果を検証するために、状況ごとに経年変化を分析可能なトレンド分析機能を開発した。
 開発した機能を具体的なデータに適用し、実証検証を行ってきた。トレンド分析機能については、2008年~2015年に起きた高校での柔道事故について、柔道の技ごとにトレンド分析を行った。柔道事故については、2013年に書籍が発行されるなど社会問題化し、注意喚起が行われ、特に「背負い投げ」と「大外刈り」のリスクが指摘された。その影響もあり、事故に関連した「背負い投げ」が、2013 年から顕著に減少していることが分かった.一方「大外刈り」は顕著な減少はしておらず、未だ解決していないことが分かった。
 小学校での事故データにデータ統合・共有機能を適用することで、跳び箱で手首の骨折など比較的重症事故が発生していることが分かった。課題解決につながる詳細な分析を行うため、小学校と連携し、跳び箱の授業を観察し、事故につながる跳び方や状況の分析を行った。分析結果を含めて、事故につながる跳び方やチェックすべきポイントを整理した予防のためのソフトウェアを開発した。