Japan Association for Medical Informatics

[2-F-2-2] 病院情報システムのデータを用いた経口血糖降下薬併用パターンと治療成績の関係の網羅的探索

菅田 夏央1, 久留宮 千賀1, 兵頭 勇己2, 永田 桂太郎2, 畠山 豊2, 奥原 義保2 (1.高知大学 医学部医学科 先端医療学コース, 2.高知大学 医学部 附属医学情報センター)

背景:Ⅱ型糖尿病の治療はまず生活習慣の改善から行われ、不十分である場合に経口血糖降下薬(OHA)が処方される。この段階では、インスリン抵抗性やインスリン分泌能が異なる様々な病態の患者が存在すると考えられる。現在7種類に分類されるOHAは、それぞれインスリン抵抗性やインスリン分泌能に対して異なる作用機序を有し、併用療法が考慮されることも多い。しかし、併用療法の効果に対する明確なエビデンスは存在せず、併用療法のガイドラインも確立されていない。目的:投薬前の検査値などに反映される様々な病態に考慮しながら、実際に処方されているOHAの併用パターンと、治療成績との関係を網羅的に探索する。方法:高知大学医学部附属病院の病院情報システムにおける1981年から2016年の匿名化されたデータのうち、OHA処方患者の処方前のHbA1c値および最終処方前3ヶ月以内のHbA1c値が存在する4664人を対象とし、最終処方以前2ヶ月のHbA1c平均値が7.0%未満である場合を薬剤の効果ありとした。さらに、患者の病態に関係し、実施頻度の高い検査項目として、初回処方前直近のHbA1c,ChE, SCr, Alb, TGを抽出した。実際の併用パターン102通りを含むこれら多数の項目を検討するため、決定木による解析を行った。結果:処方開始直前のHbA1c値が最初の分岐として現れ、年齢による分岐が次の属性条件として確認された。それ以降は、OHAの併用パターンによる分岐にTG,ChEなどの検査項目による分岐が続き、同じ併用パターンでも検査値によって治療成績が異なることが確認された。考察:決定木の結果から、特に初期HbA1c値および年齢が治療成績に強く関係し、さらに検査値によって同じ併用パターンでも治療成績が異なることが示された。このことから糖尿病治療において患者背景を考慮したOHAを選択することが重要であることが示唆された。