Japan Association for Medical Informatics

[2-F-3-2] 近未来の地域統合型医療情報システムに求められる医療情報技師の専門性(試論)

伊藤 弘人 (労働安全衛生総合研究所過労死等調査研究センター)

 本報告では、地域医療連携・地域包括ケアに求められる医療情報に関する専門的人材のコンピテンシーの要素について、近年の医療政策の動向やシステム化の経験から整理することを試みる。検討対象は、国内外の政策の動向や地域での実践例であり、医療・病院管理学の観点から整理した。その結果、(1)地域連携の方向性、(2)地域連携が必要な地域での対象者、および(3)守秘性の考え方に諸類型があり、一定の方向性が認められた。(1)医療情報の連携では、入院から地域へという垂直連携に加え、他領域との水平連携が求められる。医療介護連携や重症化予防の施策の動向、日本医療情報学会がリードして策定した4疾病の「ミニマム項目セット」および「どこでもMY病院疾病記録セット」(2012)、医療計画上で策定が求められる地域連携パスの統合の試みなどは、水平連携の好事例と考えられる。(2)地域において医療情報を統合する必要がある患者は、退院する全患者ではなく、複合疾患を有して生活上も複雑な問題をかかえている少数の患者であると考えられる。自治体とも協力して患者を地域で支えるプラットフォームが求められる。(3)(2)の対象者の医療情報の守秘性については、医療圏内で完結する必要があると考えられた。域内ではできる限り医療情報を共有する一方で、域外への医療情報の流出には敏感になる必要がある。なお医療圏内での情報共有については、オプトアウト方式を導入しているニュージーランドや災害時システムなどは参考になると考えられた。医療情報技師は、日常業務に積極的に取り組みつつ、以上の方向性を理解した上で、近未来の制度変化への対応を組織から求められたとき、適切な解決策を提示できる能力を準備しておく必要があると考えられる。