Japan Association for Medical Informatics

[2-F-3-5] 新時代の医療情報人材に求められる“システム思考”の力

藤本 智裕 (池田市役所・市民生活部 にぎわい戦略室)

 かつてITプロジェクトの成功率は3もしくは4割程度とされ、関西医療情報技師会では医療情報技師にむけて定量的管理手法であるプロジェクトマネジメントの普及を進めてきた。しかしながら一方で、プロジェクトはQCDを完遂し成功したものの「システムに作り込んだ機能の内、全く利用されない機能」が45%もあるとのデータもあり、"プロジェクトの成功"が"事業の成功"であるとは限らない。これは、何を作るか"What"のデザインが不明確のまま、どのようにして作るか"How"のマネジメントが進められた結果であるといえる。
 特に、医療ITが対象とする医療が抱える課題の多くは、その複雑性や不確実性が高まり、もはや特定分野の専門家や専門知識だけではその問題解決の方法が見いだせない。このため、多様な共創の中で、全体統合的に問題の解決方法をデザインする"システム思考"の能力が今求められている。システムデザインとは、その方法論としての"システムズエンジニアリング"と、それをデザインする人材の能力としての"システム思考"がある。
 "システム思考"とは、すべてのモノゴトをシステムとして捉えて、その全体俯瞰と構成要素の繋がりを意識しながら、多視点化・構造化・可視化を行う思考法のことである。その思考のツールとして、ロジカルシンキングやシステムズエンジニアリングを活用する。
 "システムズエンジニアリング"とは、システム構築の方法論であり、目的を達成するために組織された相互に作用する要素の組合せと定義される"システム"を、デザインする活動である。国際標準としては、システムライフサイクルプロセス規格ISO1528(JIS X 0170)がある。
 これらは、まさに医療情報人材が、今後担うべき役割であり、身に付けるべき能力である。