[2-G-1-1] リアルワールドエビデンス(Real World Evidence)を用いたクリニカルパス分析手法の検討
目的 : クリニカルパス(以下パス)は、作成だけでなく、改善も重要である1)。従来の改善はバリアンス分析を医療専門職間で協議した行っている。近年、電子カルテにデータとして蓄積されたリアルなデータを用いて、エビデンスを導くリアルワールドエビデンス(Real World Evidence:RWE)の手法が医療で利用されだした。今回、蓄積された電子カルテデータを用いてパスの改善を試み、RWEによるパス分析の有効性を検証した。対象と方法 : 宮崎大学医学部附属病院のパスを用いて2012年4月1日から2016年3月31日に実施した胃の内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection: ESD)242症例を対象とした(術後穿孔症例は対象外とした)。検討項目は抗生剤投与の原因として、術中穿孔と誤嚥性肺炎に関するデータを収集した。38度以上の発熱と白血球数は術後3日以内と限定した。結果 : 術中に穿孔を認めた症例は3例中2例に抗生剤を投与し、1例は経過観察であった。穿孔した3例に発熱を認めず、抗生剤投与の2例中1例は術後に軽度の誤嚥性肺炎が登録された。術後に誤嚥性肺炎を登録した症例は11例であり、抗生剤投与は8例であった。他は経過観察であった。発熱は3例であった。誤嚥性肺炎の症例で白血球数は1万以上が8例あり、抗生剤未投与は3例であり、白血球数は1万以下であった。誤嚥性肺炎の発症例は白血球数が1万を越えることに有意差を認めた。結語 : パスは医療内容の仮説であり、バリアンス分析で仮説を検証する前向き手法である。今回のRWEパス分析は、後向き手法である。白血球数が1万を越える症例は誤嚥性肺炎を発症している可能性高いことを疑わせた。穿孔症例が少なく、穿孔と抗生剤の関係は検討できなかった。今回の研究より、RWEを用いたパス改善手法の可能性を示唆できた。