[2-G-1-4] 開腹手術と腹腔鏡手術の予後に対する病院情報データを用いた検討
背景手術には開腹手術と腹腔鏡手術などがあり、腹腔鏡手術は一般的に侵襲が低いと言われている。近年では、腹腔鏡手術が増えているが、腹腔鏡手術の治療成績について根拠が不十分なものも多い。Bonjerらの直腸がんに対する先行研究では腹腔鏡下手術と開腹手術の局所領域(骨盤や会陰部)再発率、無病生存率、全生存率は同等であるという結果が報告されている。一方、日本で罹患率、死亡率ともに上位の胃がんに対しては、腹腔鏡手術と開腹手術の比較に関するエビデンスは確立されていない。目的胃がんに対する開腹手術と腹腔鏡手術の1年予後を、術後腫瘍マーカーの上昇をアウトカムとして、比較した。方法高知大学医学部附属病院の病院情報システムのデータにおける胃がんの手術をした患者を開腹手術群と腹腔鏡手術群にわけた。術後の腫瘍マーカーCA19-9の値が50を超えることをイベントとし、手術日から初めて50を超えた日までの経過日数を生存時間として、生存時間解析を行った。結果手術後1年以内にCA19-9の値が50以上となった人は開腹手術群では119人中36人(30.3%)、腹腔鏡手術群では953人中147人(15.4%)であった。生存曲線に対するログランク検定のp値は0.01未満であった。性別、年齢および術前のCA19-9の値で調整した開腹手術に対する腹腔鏡手術の調整済みハザード比は0.423(95% CI: 0.30-0.66)であった。考察単項目のログランク検定、調整済みハザード比、いずれにおいても開腹手術と腹腔鏡手術に有意差があり、腹腔鏡手術のほうが予後良好であることが示唆された。腫瘍マーカーはがんの再発などで上昇するため術後の経過観察や予後推定に使われており、本研究の結果は胃がんでは開腹手術に比べて腹腔鏡手術は再発に関する予後が良好であることを示唆していると考える。