Japan Association for Medical Informatics

[2-G-1-5] CKD合併症擬似コホート研究

川野 光一1,2, 荒木 賢二1, 山﨑 友義1, 串間 宗夫1, 小川 泰右1, 松尾 亮輔1, 窪山 美穂2 (1.宮崎大学医学部附属病院医療情報部, 2.森のクリニック)

背景:診療データの蓄積が急速に進んでおり,このような医療ビックデータを後ろ向き研究で適切に利用することで,擬似的なコホート研究への可能性が開かれると考える.研究目的:本発表では,蓄積された診療データにより擬似コホート的な研究の可能性についての検討結果を報告する.具体的には,CKD患者を後ろ向きに追い,ケースコントロール、症例対象研究でCKD合併症の時間軸における見える化が可能となるか考察する.手法:日本におけるほとんどの糖尿病患者が遺伝と生活習慣に起因する2型糖尿病で、大規模前向き疫学研究により,血糖コントロールにより合併症の発症・進展を阻止できることが証明されている。しかし、33万人の透析患者の内12万人を占める原疾患2型糖尿病患者が存在する。CKDに至り透析施行中の患者を例として,宮崎大学医学部附属病院のDWHのデータ(2006年から2015年、10年分)を対象に,5年以上の長期の状態を追える患者60名のデータを抽出し,データから患者状態を解釈できるかを検討した.結果:抽出前に想定したデータ項目に対し,抽出したデータから解釈できたのはCKDの病名が付され透析導入からの時間軸に対する合併症は「高血圧症」、「閉塞性動脈硬化症」や「鉄欠乏性貧血」等の事項であった。しかし,「シャントを何時作成したか」「その後の合併症の発症」など他の病院での診療がわからないと判断しきれない限界があった.考察:DWHによる擬似コホート的な研究は,透析患者だけにとどまらず.他の疾患についても同様に,抽出すべきデータ項目を整理,体系化することで,可能になると考える.解釈作業は,病名付与や検査といった多様で長期に渡るデータを,通時的に俯瞰することが望ましく,そのための電子媒体の開発や,状態遷移が類似した患者を機械学習によりグループ化することで情報が欠けている部分に専門家が解釈を与えやすくする支援機能の具体化に向けて検討を進めたい.