Japan Association for Medical Informatics

[2-G-2-1] 臨床意思決断支援システムのアルゴリズム対象としてのプロファイル情報の範囲と課題

石田 博 (山口大学)

 医療安全を目的としたアレルギー薬のオーダ時のチェックや放射線造影剤のチェックなどが多くのシステムで実装されているもののベンダー毎の機能に留まっている現状にある.これらのオーダ時のチェックを含めた,臨床意思決断支援システム(Clinical Decision Supporting System: CDSS)としてのアラート・リマインダー機能をベンダー横断的な共通基盤の上で有効に稼働させるためには,アルゴリズムの対象となる情報を容易に取得しうることが必要である.プロファイル情報は,その多くが患者横断的に取得され,また.データ活用が比較的容易であることからアルゴリズム種別の拡大やレスポンスの面からも重要な対象情報である.
 しかし,現状の電子カルテにおけるプロファイル情報は,各々の項目名称やその情報内容は,ベンダーや医療機関でそれぞれ異なることが一般的で,二次利用やCDSSを目的とした標準化からは,未だ遠い情報と言える.
例えば,薬剤オーダ時のアレルギーチェックでは,販売名ではなく成分によるチェックが必須であり,持参薬を含めた成分名と紐付いた販売名,あるいは,成分名そのものの登録を可能とするマスター整備が必要である.さらに,ウイルス性肝炎患者への受診勧奨や特定薬剤のオーダ時のB型肝炎ウイルスの再活性化予防のアラートなど,アルゴリズムの対象となる病原体の様々な検査結果をプロファイル情報として自動更新にしておくことが有用と考えられる.さらに,アラートの対象となるペースメーカや刺青といった体内留置物,妊婦情報などの従来からの静的なプロファイル情報に加えて,抗凝固薬や長期のステロイド薬,NSAID服用中のチェックなど,その時点で変わりうる動的な情報についてもプロファイル情報とするかの検討が必要と考える.そして,これらのプロファイル情報を活用したCDSSの共通基盤を構築する上でも各項目自体の標準化とSS-MIX2など標準的なストレージが望まれる。