Japan Association for Medical Informatics

[2-G-3-4] 電子カルテへ実装したインスリン指示機能の実際と課題

田中 忠宏1, 星乃 明彦2, 三隅 留美子3, 野口 忠祥4, 田上 治美1 (1.済生会熊本病院薬剤部, 2.済生会熊本病院糖尿病科, 3.済生会熊本病院医療安全管理室, 4.済生会熊本病院医療情報システム室)

【目的】インスリン指示には、患者状態に応じた投与量の調節に関する約束事を含んだ指示体系としてスライディングスケールを使う施設が多い。当院もこの方式を採用するが、複雑な指示体系のためシステム化が困難であり、電子カルテ稼働後も長らく紙伝票による指示を継続してきた。しかし、2016年度の当院データではインスリンの投薬忘れや過剰投与などのエラーが薬剤エラーの14%を占めており、危険性の高い薬剤であるインスリンのエラーを防止する手段として指示の電子化を目指すこととなった。【方法】電子カルテシステムはNEC株式会社のMegaOak HR(R11)を使用、標準のインスリンオーダーシステムに対して食事スケール指示を追加した他、指示から投与まで安全な運用を目指した各種のカスタマイズを行った。また、本システムだけでは対応が困難な低血糖等のイレギュラー発生時の補完用として、専用の記事テンプレートと低血糖対応用の必要時指示を用意して全体の運用を構築した。【結果】指示画面を従来の紙伝票のイメージに近づけたため患者毎の指示の視認性は良く、病棟全体のリスト表示により投与および血糖測定状況の確認が紙伝票より容易になった。また、血糖値と食事量に応じた投与量が自動計算されることで計算間違いの可能性が減少した。一方で、指示セット方法が独特の操作体系であり、指示変更などの操作には医師の習熟が必要となるため、本抄録執筆時点では病棟毎に周知活動を行い段階的な導入を進めている最中である。【考察】紙伝票によるインスリン指示には柔軟性があり指示を出す医師と受ける看護師の協働が成り立ちやすいものであったが、システム化で柔軟性が失われることでインスリン指示運用の難しさが顕在化した。しかし、システム化により得られる医療安全上のメリットも大きいと期待され、今後の全病院への導入完了後にはインスリン指示に関するエラーの低減が見られることを期待したい。