一般社団法人 日本医療情報学会

[2-H-1-2] プライバシー侵害のリスクに応じた一般市民の望む適切な同意のあり方の研究

吉田 真弓1, 田中 勝弥2, 山本 隆一1 (1.(一財)医療情報システム開発センター, 2.東京大学医学部附属病院)

背景:現在、整備検討が進む医療等IDが導入されるとPHRの実現に近づく。また、今年5月に次世代医療基盤法が施行され、多施設や長期間に渡っての患者情報の紐付けには、医療等IDが必須であり、その上で匿名加工医療情報の二次利用によって、地域医療や包括ケア、それらを支える産業の発展など、広い意味での公益に繋がると思われる。目的:昨年度実施した厚労省研究事業「医療等IDの導入を前提とした医療情報を患者自身が管理可能な基盤に関する制度・技術の検討」におけるプライバシー侵害のリスクに応じた適切な同意のあり方・市民の望む適切な同意のあり方についての調査結果から提言を行う。方法:一般市民2060名に対し、スマホの所持や、自身の診療情報や匿名加工医療情報の利活用に対する意識、望ましい同意取得についてWebアンケートを今年3月に実施した。また、2014年3月に実施した同様の調査結果との比較を行った。結果:スマホやお薬手帳の所持率や積極的な利用が2014年に比べて増加していたが、健康情報の利活用やセキュリティへの意識は大きな変化はなく、受診時の「黙示の同意」については、多施設で診療情報を共有する場合は黙示の同意で十分と考える人は2割に満たず、オプトイン同意が必要とする人が半数近く存在した。公益目的での情報の2次利用については、大多数の回答者が、丁寧なオプトアウト同意なら問題ないと考える傾向が見られた。考察:匿名加工情報の2次利用は、多くの市民が、公益利用の意義や重要性を理解しつつも、単純なオプトアウトでは不十分であり、確実な通知の上でのオプトアウト同意を求めており、利用の履歴を自身が管理できること、利用範囲や種類を自身が決めること、つまり自身の情報のコントロール権を持つことを望んでいた。これを満たすには、医療用IDを適切に導入した上で、情報の2次利用に関しては患者が信頼し安心できるような、医療機関にも過度な負担のない適切な同意取得の仕組みが必要である。