[2-H-2-2] 肺炎入院患者の重症度をレセプトデータから事後的に生成できるか?
【目的】各医療機関において日常的に生成・蓄積されているレセプトデータをもとに、肺炎入院患者の重症度を事後的に判別する判別モデルの開発と開発したモデルの判別能を評価する。【方法】肺炎入院患者の重症度は、調査施設で記録されたA-DROPによる肺炎重症度情報を用いた。解析用のデータセットは、重症度を付与された肺炎患者のレセプトデータをもとに、入院時に提供されたすべての診療行為の実績情報を有するデータセットを生成した。生成したデータセットは統計モデル構築用の訓練用データセットと構築したモデルの評価に用いる評価用データセットに二分割を行った。統計モデルの構築と評価は以下の手順とした。(1)診療行為実績の該当を示す各変数の単変量解析を行い説明変数候補のスクリーニングを行った。(2)スクリーニングされた変数からグラフィカルモデリング法を用いて、変数間の関連が弱い組み合わせとなる変数を選定した。(3)4つの重症度区分をもつ肺炎重症度を順序ロジスティック回帰モデルの目的変数とし、統計的有意水準0.2未満を基準とするステップワイズ法をもとに説明変数の変数選択を行った。(4)構築したモデルの判別能は、事前に付与されたA-DROPの重症度と評価用データに構築したモデルを適用させて判別された重症度の一致割合(95%信頼区間)をもとに評価した。【結果】レセプトデータから8つの説明変数を有する判別モデルが構築された。説明変数は年齢、性別のほか、酸素吸入やフローボリュームなどの診療行為実績を示す変数が選択された。未知となる評価用データに構築したモデルを適用させた判別能は、A-DROPによる肺炎重症度との一致割合0.779(95%信頼区間:0.713-0.836)であった。【結論】保険診療を行う医療施設に蓄積されているレセプトデータをもとに、肺炎入院患者の重症度を事後的に生成することは可能である。