Japan Association for Medical Informatics

[2-I-3-3] がん診療統合データベースの構築:手術、化療、放射線治療、病理データの連結

鈴木 一洋, 笠原 あや菜, 小口 正彦 (公益財団法人がん研究会有明病院 臨床研究・開発センター データベース&バイオバンクセンター)

医療情報システムの普及に伴ってデータの電子化が進み、日常診療におけるリアルワールドデータの収集が容易になってきた。標準的なデータ形式での診療データ出力を特徴とするSS-MIX/SS-MIX2に対応するストレージの導入も少しずつ進んできているが、がん診療における多様な診療データを取り扱うにはまだ十分ではない。今後のがん診療において「個別化医療(プレシジョン・メディスン)」を推進していくためには、基盤となるデータベースが必須であり、がん診療に関する診療情報を統合的に保存・管理するデータベースの開発は喫緊の課題である。これまでの診療データを未来の診断・治療技術の向上に役立てようとする取り組みは多数存在するが、電子カルテシステムに依存しない独立なシステムであり、かつ、幅広いがん種に対する病理組織診断から手術・薬物療法(化学療法)・放射線治療の実施情報を含む集学的がん診療に特化した「診療情報統合データベース」の構築に関する報告は存在しない。当院では、「がん診療に関する情報を統合的に保存・管理するデータベース」を開発し、病理部門情報システム・放射線治療部門情報システム・健診システム・外来受付システム・電子カルテに付属するDWHの計5システムとのシステム間連携を新たに構築して、実施済かつ確定済の情報のみを定期的かつ自動的に収集した。がん診療に関わる多くのデータが論理的・物理的に統合された結果、【肺の手術を施行した患者のうち、病理組織診断で腺癌と診断され、かつ、ALK陽性の所見がある患者リスト】や【病理組織診断で「HER2(2+)かつFISH増幅あり」の所見があり、乳房の部分切除を施行し、化療でカドサイラ療法を施行し、放射線治療で全脳照射を施行した患者リスト】といった条件による検索を概ね5秒以内に表示できており、診療補助や臨床研究においてさらなる活用が期待される。