Japan Association for Medical Informatics

[2-J-4-4] 患者 ID の多重発行を防止する運用の検討

佐藤 大1, 及川 幸子2 (1.東北医科薬科大学 医学部, 2.東北医科薬科大学病院 事務部)

東北医科薬科大学病院では、患者IDの多重発行がほぼ毎月数件ずつ発見されている。医事課で実施冴える患者データ検索により発見されるケースがほとんどで、氏名・住所・保険証など患者属性の変更を伴う会計を契機とするものが多い。このような患者IDの多重発行が発生する状況について、患者受入れから患者ID発行にいたる業務フローを調査した。また業務フロー内で患者ID多重発行の原因となりうる点を抽出し、それぞれについて患者ID多重発行を予防する手段について検討した。患者ID多重発行にいたる原因には、大きく分けて緊急性を優先するために確信的に発行した場合と、患者の個人同定情報が誤っていた場合とがあった。後者においてはさらに、患者の同定を誤った場合、患者同定は正しかったがその後の情報伝達において情報が変化してしまった場合、患者同定情報は正しかったが医療情報システム上で既存患者IDを正しく特定できなかった場合が存在した。確信的な発行は、特に救急外来においては回避できないケースが少なからず存在するが、緊急性の判定基準を明確にすることで、多重発行を避けうる状況も存在すると思われる。また患者の同定や情報伝達における誤りは、聞き間違いを回避するなど運用上の対応により減少が可能であると考えられる。一方で、患者同定情報が正しいにも関わらず患者IDが特定できなかったケースでは、多重発行を発見した際と同様の検索を多重発行の発生時にも行っているため、理論的には多重発行が発生しなかったはずであった。これはシステム上での患者ID検索が作業者のスキルや作業環境に依存しており、検索の再現性が不完全であることを示している。情報誤りおよび特定不可のケースでは、誤りやすいパターンや熟練作業者による検索方法をシステム上の患者ID検索機能に組み込んで半自動化することにより、患者IDの多重発行の予防が可能になると考えられる。