[2-K-3-4] Deep Learningによる口腔内画像からの歯式情報認識の試み
【目的】近年,大規模災害時の身元不明者に対する個人識別を行う場合、口腔内情報が有効であると言われている。2015年より本院のDWHでは1歯単位での初診状態、歯科処置履歴,歯周組織状態等の情報を蓄積しているため、これらの情報で個人識別が可能かどうか検討し、第36、37回本大会において、口腔内情報による個人識別では処置履歴と初診時の口腔内情報が重要であると報告した。しかし、初診診察時の口腔内診査結果を電子カルテへ入力する操作は煩雑であり、効率的な入力機能の実現が望まれている。そこで本研究では、口腔内画像の歯列情報からdeep learningによる歯の自動認識を試み、歯式情報認識の可能性について評価を行ったので報告する。【対象および方法】歯の自動認識対象はデジタルカメラで撮影した上顎永久歯列咬合面画像に限定し、上顎歯列に残存する健全歯とした。歯の自動認識はSingle Shot Multibox Detectorで行った。歯種の認識に対する評価は、不正咬合を含む健全歯からなる上顎歯列と歯科用金属による保存修復物や補綴物を含む上顎歯列に対して認識した歯種の適合率を求めた。【結果および考察】保存修復物や補綴物が存在しない、健全歯のみの永久歯列において、適合率は96.5%であり、37%の上顎歯列で1歯から2歯の誤認識が認められた。保存修復物や補綴物を含む歯列での歯種適合率は94.0%であり、保存修復物を健全歯と誤認識する状態がわずかであるが認められた。しかし、いずれの場合も適合率は100%を達成できていないため、学習データセットの不足が考えられる。今後は、学習データセット増加による評価と歯科処置歯に対する認識を行う必要がある。【結論】Deep learningによる口腔内画像からの歯の自動認識は、歯式情報認識に有効な手段となる可能性が示唆された。