Japan Association for Medical Informatics

[2-K-4-3] 対話型システムによるがん情報提供における課題の抽出 ~一般向け臨床試験情報検索サイトの構築より~

早川 雅代, 石川 文子, 髙山 智子, 後藤 悌, 柴田 大朗 (国立がん研究センター)

【背景・目的】 がんの相談ニーズは高まってきているが、人的リソースは限られ、人工知能等による情報提供や相談支援が望まれる。本研究では、将来的な人工知能による相談支援システムの構築に向けて、臨床試験情報検索サイトの構築を題材として、一般向けがん情報提供における対話型システムにおける課題を抽出することを目的とした。【方法】 大学病院医療情報ネットワーク研究センター他5サイトで提供されている10022件のがん関連の臨床試験や先進医療等のデータを収集した。収集データに関する「がん種、遺伝子、薬剤情報、施設情報」の「分類名、類義語、表記ゆれ」のデータベースを作成し、チャットボットによるキーワードでの対話型検索システムの試作版を作成した。試作版をがん種別一覧表の表示システムと比較し、試用した相談員等にインタビューを行った。【結果】 がん種別の試験数は、肺がんが最大で1707件であり、効果的な絞り込みの必要性が確認された。全文検索の対象として「試験名、疾患名、介入」項目を選択した。「適格条件」項は「~でない患者」を含むことから対象外とした。また、施設データのない試験が70.0%を占めたことから、地域や施設名での絞り込みは最終の対話により行う仕組みとした。 システム間の比較では、対話型でより迅速に目的の情報に辿りつけた。インタビューでは対話型で「乳がん」を検索した際には、全898件を絞り込むための「HER2:72件」「パクリタキセル:58件」などの次の絞り込み候補が件数とともに表示される点が評価された。また、使用感について「すぐに回答可能」「直感的な検索が良い」と良い評価の一方で、「検索がヒットしない場合に困る」との意見があった。さらに、「注意が必要な試験も他と同様に表示される」ことへの危惧があげられた。【考察】 対話型の課題として、検索方法のヒント表示やデータ自体の限界の説明、臨床試験の制度自体の理解の促進などの工夫が必要と考えられた。