Japan Association for Medical Informatics

[2-K-4-4] 治療パターンと転倒インシデントの相関ルールデータマイニング

大野 実1,2, 島田 陽介1,2, 佐藤 雅也1,3, 川崎 志保理4, 堀 賢1,5 (1.順天堂大学大学院 医学研究科 電子医療情報管理学講座, 2.セコム株式会社 IS研究所, 3.セコム医療システム株式会社, 4.順天堂大学大学院 医学研究科 心臓血管外科学教室, 5.順天堂大学大学院 医学研究科 感染制御科学教室)

[目的]病院情報システム内には,入院患者の日々の治療行為や検査結果,転床歴などのデータが時系列に蓄積されている.こうした時系列データの出現パターンを解析することで,病棟での転倒患者に有意に多く見られる治療パターンを抽出し,転倒発生に関する知見を得ることを目的とする.[方法]順天堂医院において2012年4月~2016年3月の期間に転倒した316名の患者と,性別,年齢区分(5歳刻み),資源病名,手術の有無等の条件で一致した非転倒患者316名の632名の患者群を対象とした.対象患者について,転倒日の直前10日間の治療行為,検査結果,転床歴をイベントアイテムとした出現パターンを時系列データとして作成した.非転倒患者については,対応する転倒患者を参照した適当な疑似転倒日を定義した.これらの時系列データに対して,統計ソフト「R」の「arulesSequences」パッケージを用いて,相関ルールのデータマイニングを実施した.[結果]支持度0.063,確信度0.62を下限とし,相関ルールの右辺に転倒イベントを含むルールは,30個のルールが抽出された.順天堂医院に2016年4月~6月の期間中入院した1695名の患者(23名の転倒患者を含む)のデータを検証用データとして,これら30個のルールをフィッシャーの正確性検定で検定したところ,精神神経用剤を含むパターンの出現頻度に有意差が見られた.[結論]精神神経用剤の使用が,転倒発生に関連性があることは示唆されたが,他の治療行為や検査結果との前後関係から,生物学的妥当性のある説明を導くことはできなかった.本手法は,治療行為の手順に起因するような要素の発見には適しているが,転倒インシデントはベッドやトイレ等の周辺環境状況に起因するような要素が支配的であったために,限定的な分析となってしまったと考える.