Japan Association for Medical Informatics

[2-K-4-6] 時系列成分を考慮した線形回帰による血糖コントロール予測

由井 俊太郎, 大崎 高伸, 伴 秀行 ((株)日立製作所 研究開発グループ)

健康保険組合では,健診やレセプトなどのデータ分析に基づき,生活習慣病予防や重症化予防のための効果的な保健事業を行うデータヘルスを推進している。特に糖尿病は,合併症が重篤になるため,発症予防だけでなく,糖尿病発症者の重症化予防も重要である。このため健康保険組合では,現状の血糖コントロール状態に基づき,医療機関未受診者への受診勧奨などの重症化予防対策を進めているが,現状だけでなく,糖尿病発症者の将来の血糖コントロール状態を予測できれば,事前にコントロール状態が悪くなる可能性が高い対象者についても対策が可能になると考えられる。そこで,糖尿病発症者の効果的な重症化予防支援を目的に,健診とレセプトのデータを活用し,血糖コントロール状態を高精度に予測する方法を提案する。通常,診療行為の実施有無に基づいて,線形回帰などの手法を用いて,将来の血糖コントロール状態を予測する方法が用いられる。しかし,健診データやレセプトデータには,検査値を取得した時期や診療行為の実施した時期も含まれるため,実施有無に加えて,時系列の情報も考慮することで,さらに高精度に血糖コントロール状態を予測できるのではないかと考えた。そこで提案手法では,説明変数のデータセットを生成する際に,時系列成分を考慮してデータセットを生成することとした。提案手法の有効性を示すため,糖尿病発症者8820人の2013年から2016年の健診とレセプトデータを用いて,モデル精度を表すAUCを交差検証して従来手法と比較した。なお,説明変数は2013年の検査値と2013年から2015年の診療行為から生成し,目的変数は2016年の血糖コントロール状態とした。その結果,従来の実施有無のみを使った手法のAUCが0.784であったのに対して,提案手法のAUCは0.805と改善した。時系列成分を考慮した提案手法のほうがAUCは高くなり,血糖コントロール状態をより高精度に予測できる可能性を見出した。