Japan Association for Medical Informatics

[3-A-3-1] [鼎談]ユビキタス時代の医療ICTへの挑戦-医療保健チームの広がりと新たな機能分化-

坂本 すが1,飯野 奈津子2,宇都 由美子3 (1.東京医療保健大学副学長,2.NHK解説主幹,3.鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)

わが国の医療・介護は、2025年問題に象徴される高齢化の速度と量の問題への対応に揺れ動いています。「効率的かつ質の高い医療提供体制の構築」と「地域包括ケアシステムの構築」が掲げられ、最終的には、「利用者の視点に立って切れ目のない医療及び介護の提供
体制を構築し、国民一人一人の自立と尊厳を支えるケアを将来に渡って持続的に実現していく」ことが目指されています。これらを本音ベースで言い換えると、何とかして、限られた医療・介護資源の中で、効率を高め、質も維持・向上させながら、乗り切きたいということになります。切れ目のない医療・介護の提供体制の構築に関する取り組みは、今に始まったことではなく、「保健・医療・福祉の連携」として、何十年間もその時々の施策に反映されてきました。しかし、各ケースの情報共有程度では済まなくなってきたため、医療も介護もわかるという人材レベルの育成・共有という段階に進もうとしています。
 高齢化の速度と量の問題への対応について、厚生労働省は平成27年6月に、「保健医療2035提言書」を出し、「キュア中心からケア中心へ」を挙げています。ケアの担い手として、看護職はこれまで以上に在宅医療や介護施設での活躍が期待されています。限られた医療・介護資源の中で、より効率的・効果的に山積した問題解決に当たっていくためには、ユビキタス社会を背景としたICT の活用によって、突破口が得られるはずです。そして、それを支える医療保健チームの役割拡大と機能分化に新たな工夫ができれば、どこに住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会が実現できるはずです。
 大会長講演と言う貴重な機会を賜りましたので、元日本看護協会長の坂本すが先生、NHK解説委員の飯野奈津子先生のお力をお借りして、本大会のテーマに果敢に取り組んでみたいと思います。大会長の私が凡人なので、あえて「三人寄れば文殊の知恵」と書かせていただきますが、文殊の知恵を持っておられるお二人と凡人の浅はかな智恵しか持たない私が、90分間に渡って繰り広げる鼎談を、是非お楽しみください。