一般社団法人 日本医療情報学会

[3-A-4-1] クリニカルパスの標準化の課題と対策

中島 直樹 (九州大学病院)

医療の主要な業務システムである「電子カルテ」に蓄積したデータを2次利用するデータ駆動型医学医療研究が急激に進みつつある。行政が主導する次世代医療ICT基盤協議会でも、レセプトデータのような診療行為データの活用のみならず、診療の結果としてのアウトカムを解析するための基盤の構築を強く求めている。電子カルテに実装されつつあるアウトカム志向型クリニカルパス(以下パス)はそれを担う機能として期待されている。その一方で、パスの概念が明確でなく、ベンダー毎の電子カルテ標準パッケージに搭載されているパスの機能は様々に分化しており、さらに導入病院の多くはカスタマイズをしている上、出力機能も十分ではない。そのため、近年は医療施設単体での症例数の多いパス解析は発表されつつあるが、複数の医療施設によるベンチマーク解析や統合解析は困難である上、多大な手間がかかり、症例数が少ない疾患パスの解析はほぼ不可能な状態である。つまり、今後パスをアウトカム解析基盤のデータ源とするためには、1)そもそものパスシステムやその運用の標準化、および2)出力データの標準化、2)が不可欠である。日本医療情報学会と日本クリニカルパス学会はこれらの課題に取り組むため、2015年に合同委員会を設置し、電子カルテベンダーが参加する保健医療福祉情報システム工業会の正式な協力を得て、上記の1)2)のクリニカルパス全体の標準化活動を行ってきた。アウトカム・アセスメント・タスクの3層構造からなるデータ・ユニットを医療工程の最小基本単位とし、パス全体をこのユニットで構築する考え方である。また、そこに用いられる標準的なマスターは「標準アウトカムマスター(BOM)」として、HELICS標準になりつつある。本発表では、これら活動の概要を報告する。