Japan Association for Medical Informatics

[3-B-1-1] 定量監査により退院時要約の質を担保する

渡邉 直 (一般財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)顧問)

【背景】 退院時要約(以下「退院サマリー」)の標準的枠組み規定が固まる状況となったが,その枠組みへの電子カルテからの流し込みや自動入力など,作成の容易化を電子カルテシステムにおいて実現し,準備できることが,普及の鍵であることは言を俟たない.一方でその枠組み内に,いかに必要な情報をコンサイスに盛り込めるのか,何を記載すべきなのかについては,あくまでも臨床教育的な観点からの方向付け,指針呈示が必要である.すなわち,サマリーの質の担保には,明確な基準に基づく監査の施行がかかせないと考えられる.
【方法】 医療・ケアの連携の時代である事を踏まえ,退院サマリーを医療健康情報伝達の重要ツールとして定義づける.この観点から筆者らは,聖路加国際病院・研修管理委員会ならびに医療記録オーディット委員会内において,サマリー内に盛り込むべき内容を規定し,20項目のチェックリストを作成した.そしてこれを0点1点2点の三段階評価法で定量化し監査する取組みを,2011年より実践した.
【結果】 研修医作成の退院サマリー(内科・外科サマリー主体)の随時抽出監査を実施,集計をしてみた(n:30~111)ところ,本定量監査開始後1年目の2012年で総合2点満点のところ平均1.21点であったものが2013年で1.63点となり,有意(p<0.05)に質向上が認められ,以後この評価法を元にした記載教育継続を経て2014年~2016年1.63点を維持,2017年ではさらに1.68点に有意向上を得た.
【考察・結語】 Persistent interest(健康問題に関する継続的な関心事)を簡潔に伝承するツールとしての標準化サマリーに,いかによい質のコンテンツを盛り込めるか,その方法としての定量監査法の有用性が確認できた.今後,全国的なサマリーの質の担保・向上のために,さらに多施設においてこのような取組みを共同で実施し,相互比較や評価基準の洗練と統一化を図ることが期待される.