Japan Association for Medical Informatics

[3-B-1-3] 地域包括ケアシステム時代に求められる退院時要約

廣瀬 弥幸 (医療法人陽蘭会広瀬クリニック)

 本邦では高齢化が進み、それを支える生産年齢人口は減り続けている。また、財政も厳しい。社会の持続性が危惧されており、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることを目指す地域包括ケアシステムの構築が急がれており、その実現のためには医療や介護、予防、住まい、生活支援等が、有効で効率的な連携を行う必要がある。
 退院時要約の標準化による医療の重要な情報の共有は、地域包括ケアシステムでの医療に関する情報共有の業務効率を高めるであろう。この中でProblem Listが記載され、全人的に問題が取り上げられ、老いや障害、認知症、治癒困難な生活習慣病を抱えて長期間生きる人々の生活が支えられることにつながると期待される。しかし、現状の退院時要約やProblem Listでは医学的領域の問題に焦点が当たっており、それ以外の問題は記載されない。一方、介護においては、生活を支え自立を支援する視点から、医学的領域以外の問題も広く収集していることから、医療と介護が共にProblem Listを作成すべきである。今後の情報活用のためにはProblem Listに挙げられる項目はコード化され分析できるべきであることから、国際生活機能分類(International Classification of Function, Disability and Health:ICF)を活用することを提言する。
 医療では「できないこと」に注意が集まることが多いが、ICFでは「できること」を重視する。例えば「麻痺があるから看護師等が食事の介助をする」のではなく、「特殊な自助具を準備して自分で食べるようにする」と考える。入院と在宅を繰り返す場合、介護が大切にしている「残存機能の維持向上」を医療も意識することが重要で、これによって提供するケアが変わる。このことからすると、「Possible List」も必要となる。
 退院時要約の標準化を契機として、医療や介護等の情報共有が効率的に進み、お互いを尊重する連携が促進され、地域包括ケアシステム全体の質が向上することを期待する。