一般社団法人 日本医療情報学会

[3-D-1-4] 病棟PHSは何に置き換わるのか

脇坂 仁 (防衛医科大学校病院)

病棟業務は患者を含め、様々な人々が相互にコミュニケーションをとりながら進行していくものである。コミュニケーションをとるべき相手が声の届く範囲にいるとは限らないので、何らかの方法で情報を伝達しなければならない。このために病棟で使われるツールとして最も代表的なのがPHSであろう。
PHSはナースコールによる患者からのメッセージを受けるだけでなく、他の医療従事者への連絡に好んで使われる。声の加減による緊急性など言外の表現を加えることのできる性能が好まれる要因かもしれない。医師によるオーダーがなければ始められない看護業務なのに、オーダー発行のタイミングは看護師によって検出される場合も多い。この場合看護師がオーダー発行のためだけに担当医師を探さなければならず、業務のスムースな流れを阻害する。また入院診療計画書や栄養管理計画書の作成には多職種による作成を義務づけられており、医師の確認やサインをもとめてPHSをかけまくる看護師の姿を目にする。逆に医師が作成した書類に対していつまでも看護師による追記・承認が行われず放置されている例も多々ある。
病棟の場合、医師は決まったPHSを所持しているので、PHSの番号を持って特定の個人を探すことができるが、看護師の場合師長以外は決まったPHS番号を持たないので、特定の看護師に連絡をつけるには手間がかかる。働き方改革の趨勢から病棟でも主治医制から複数担当医制へ遷移していくものと考えられるが、対象となる患者を担当するチームの構成員が誰なのか、勤務中なのか、今病棟にいるのか、医局にいるのか、電話で連絡がつくのかといったタイムリーな情報を人の頭の中だけで維持するのは非効率になりつつある。業務ごとの連絡先更新管理や呼び出し範囲の順次拡大など、PHS変わる新たなコミュニケーションデバイスに求められる機能について論じる。