Japan Association for Medical Informatics

[3-D-2-3] スマートフォン内蔵カメラを利用した画像観察(視診)用の遠隔診察システムの開発

本間 聡起1,2, 小林 直樹3 (1.独立行政法人 地域医療機能推進機構 埼玉メディカルセンター, 2.慶應義塾大学看護医療学部・同SFC研究所, 3.埼玉医科大学保健医療学部)

遠隔診察は、五感を駆使できる対面診察と異なって画像や音声による視診と聴診に限定される。身体各所の視診では、遠隔の医師が希望する観察対象への患者側の診察介助者によるカメラワークが難しく操作時間も長くなった。一方、高画質を得て診断精度を向上させるには、テレビ電話の動画像より静止画像の方が画質は良い。静止画をリアルタイムで送るには簡潔な操作で短時間のうちに遠隔地の医師に送れるような効率性も求められる。また、視診の中でも皮膚や眼瞼結膜の観察においては、患者側の周囲の光線や明るさの変化によって伝送画像の色合いも変化する。その影響を排除し、さらに口腔内の観察など暗い部位の観察にも適する、以下のような仕様の遠隔視診システムを開発し実用実験を行った。すなわち、1) 被写体と撮影画像を同一視野で目視しながら撮影できる、2) 静止画を得たいタイミングで容易にその画像をキャプチャできる、3) 一定の光源をカメラに備える、4) この静止画像を診療録上に容易に保存できる、である。本研究では、この仕様を満たすと同時に、各モニタデータのサーバーへの伝送を行う際のゲートウェイ機能も兼ねるものとして、高品質の外部カメラを内蔵し、日常的に汎用されているスマートフォンを採用するシステムを構築し、実際の遠隔診察実験において、その性能を検証した。その結果、下腿浮腫の遠隔からの観察所要時間(記録時間も含む)は、本システム導入前が1分53秒(9例)に対して、導入後は1分12秒(8例)に短縮した(P=0.008)。ただし、場所を特定する際のカメラ連動のスピードに関しては、画面共有機能の影響により遅延が起きたり、医師側への画像転送時の待ち時間が10秒程度かかるなど、さらなる利便性が求められた。また、スマートフォンのカメラに備えられた光源では白っぽく映る特徴があり、色調の変化や立体感の観察には改良を要する点も残った。