Japan Association for Medical Informatics

[3-D-2-5] 市場経済原理導入によるベッドコントロール効率化の試み

畠中 純1, 平木 秀輔1,2, 杉山 治2, 大寺 祥佑1,2, 山本 豪志朗2, 佐々木 博史2, 岡本 和也1,2, 南部 雅幸2, 黒田 知宏1,2 (1.京都大学 大学院情報学研究科, 2.京都大学医学部附属病院)

診察において入院か゛必要て゛あると診断された患者をと゛の病床に割り当てるか決定することをヘ゛ット゛コントロール(以下BC)と呼ふ゛。入院による収入は医業収益の約半分を占めることから、健全な病院経営には効率的にBCを行うことが重要となる。現在、BCは専門の担当者によって中央集権的に行われることが多い。しかし、病棟こ゛との看護師のスキルや繁閑の程度か゛不明な状況て゛割り当てか゛行われるため、適切な割り当てとならないことも多い。BCを行う際にそれらの判断材料を定量化することで制約充足問題として解決し、中央集権的なBCを改善する方法が提案されている。しかし、実際のBCにおいては患者の性別や受診する診療科などの様々な条件に加え、容易に定量化できない因子が判断材料として含まれるため、制約充足問題としての解決には限界がある。このような中央集権的な資源配分の問題点を解決する手法として、市場経済原理の導入を考えた。理論経済学において市場経済は分権的に資源配分を行う手法として解され、需給による価格の上下のみで均衡した市場を実現することが可能とされる。そのため、中央集権的な資源配分に必要な様々な要因の把握なしに、価格という単一の変数を媒介とすることによって効率的な資源配分が実現が期待できる。本研究ではBCを市場取引に見立て、仮想的な通貨を導入し医師と看護師長が患者を直接取引することで、病床と患者の需給の均衡を通じて効率的なBCの実現を図る。検証実験として、現状のBCと提案手法のBCを単純化したシミュレーションを作成し、それぞれの手法について患者の出現頻度や看護師の習熟度といったパラメータを変化させた複数の病床稼働シミュレーションを行う。本稿では、実験によって得られた看護業務量や病床稼働率などの指標の比較による提案手法の妥当性評価について報告する。