Japan Association for Medical Informatics

[3-E-1-8] 放射線治療装置(リニアック)導入による採算性に関する考察

村上 淳基1, 赤羽 学1, 中西 康裕1, 今井 信也2, 今村 知明1 (1.奈良県立医科大学公衆衛生学, 2.大阪物療大学)

[目的] 放射線治療装置(リニアック)はがん治療において欠かすことのできない医療機器であるが、リニアックの採算性に関する検討は未だ不十分である。今後さらにがん患者も増加し、放射線治療のニーズは高くなると考えられるため、リニアック導入が病院経営にどのような影響を与えるか把握しておく必要がある。本研究ではリニアック導入の採算性を病床規模別に試算した。[方法] 平成26年度に全国の一般病院一施設あたりで稼働しているリニアックの年間費用と年間収入を病床規模別に推計し、年間収支差を試算した。さらに、病床規模による収支差の要因について分析をおこなった。費用に関しては、リニアック本体、治療計画装置、CTシミュレータなどの減価償却費、維持費用および人件費を仮定して算出し、収入は「医療施設調査」、「社会医療診療行為別調査」を用いて、一施設あたりの総治療点数を算出し、収支を試算した。[結果] 病床規模別の一施設あたりの年間費用は、約1億1400万円から7600万円であった。病床規模別の一施設あたりの年間治療収入は、約5900万円から1億7400万円であった。これらを用いて病床規模別の一施設あたりの年間収支差を算出したところ、病床規模50~99床で約6000万円、100~199床で約マイナス2100万円、200~299床で約200万円、300~499床で約マイナス200万円、500床以上で約6300万円であった。[結論] 放射線治療に特化した小規模病院や大規模病院では収支がプラスとなる一方、中規模病院では収支が均衡、あるいはマイナスとなることが示された。これらの差は強度変調放射線治療(IMRT)実施の有無、または治療患者数によるものと考えられる。リニアック導入に関しては直接的な収支に加え、化学療法など併用治療による収支に間接的に与える影響や各医療施設での臨床的必要性を総合的に考慮する必要がある。