Japan Association for Medical Informatics

[3-F-1-1] ICD-11構築の経緯

小川 俊夫 (国際医療福祉大学)

 2018年6月にリリースされたICD-11の改訂作業は、WHOにより2007年より実施され、わが国もその作業に大きく貢献した。本研究は、WHOによる改訂作業を概観するとともに、わが国の貢献についても取りまとめることを目的として実施した。
 本研究は、WHO及び改訂作業に参加した専門家へのインタビューや、各種のWHO発出資料など収集して取りまとめ、ICD改訂作業の経緯とわが国の貢献について考察を実施した。
 ICD改訂作業は2つのフェーズにより実施された。ICD改訂作業の第一フェーズ(2007~13年)では、専門分野別に13の専門部会(TAG)、さらに内科分野では臓器別に8つの作業部会(WG)が組織され、コンテントモデルと呼ばれる構造案を構築した。わが国からは多くの専門家が改訂作業に参加したほか、内科部会の議長国として内科分野全体の取りまとめを実施した。改訂作業の第二フェーズ(2013~18年)では、コンテントモデルを用いた疾病・死因合同リニアライゼーション(JLMMS)が構築され、さらに2016年にICD-11-MMSと呼ばれる評価版が発表され、評価版を用いたレビュー作業、フィールドテストなどが実施された。 
 ICD改訂作業は、WHOを中心に各分野の多数の専門家により実施された。特に内科分野では、わが国は議長国として国内外の各関連学会の意見を集約し作業することで、臨床現場でも実用可能なICD-11の実現に大きく貢献した。一方で、ICD-11は2018年にリリースされたが、SNOMED-CTとのリンケージやオントロジーの活用による様々な分類の構築など検討した項目のいくつかはリリース後も継続して検討中であり、今後の課題である。さらに、わが国をはじめ各国への適用についてはこれから検討される予定で、ICD-11の本格的な普及に向けて、今後さらなる作業が必要と考えられる。