Japan Association for Medical Informatics

[3-F-1-5] ICD-11におけるV章の構造分析と生活機能分類の意義

小松 雅代 (奈良県立医科大学)

緒言
2018年6月に公表されたICD-11に、新たに生活機能分類を示すV章(V Supplementary section for functioning assessment)が、WHO-DAS2.0 36-item version(WHO Disability Assessment Schedule2.0)とICFリハビリテーションセット、およびICF付録9 (ICF Annex 9:Suggested ICF Data requirements for ideal and minimal health information systems or surveys )に基いて付加された。これらの3つのツールはICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)項目に由来するものである。本来、ICFは国際統計分類の一つとしてすでに存在している。本研究は、ICFの視点からICD-11のV章の構造について分析を行い、ICDとICFの相互利用について考察することを目的とする。
方法
ICD-11-MMS(2018年8月時点)におけるV章の内容を、ICFをベースに作成されているWHO-DAS2.0、ICFリハビリテーションセット、ICF付録9について、さらにICFの構造との比較分析を実施し、ICD-11における生活機能分類の役割と意義について考察を実施する。
結果
ICD-11-MMSにおけるV章は、心身機能(b)の8章、活動と参加(d)の9章の計17章と47のカテゴリーから構成されている。V章で用いるICF項目については、2018年8月の現時点までに候補となるツールの変更が何度かあったが、今回、WHO-DAS2.0、ICFリハビリテーションセット、ICF付録9と発表されている。この3つのツールに基づいて生活機能項目を選択することよって、ICD-11における疾病分類に対して体系的に評価するための生活機能の項目(心身機能(b)の8章16カテゴリー、活動と参加(d)の9章31カテゴリー)が抽出されたと考えられる。また、V章には「身体構造」(s)、「環境因子」(e)の章は含まれていなかった。
考察
ICD-11にV章が位置付けられたのことで、統計的に疾病や外傷、障害による生活機能を一般化することが可能と考えられる。しかし、そのためには、ICFの項目とV章の構成、既存の尺度との関連性について分析が必要である。現在、既存の尺度との関連性についても解析を進めている。今後、疾病分類と生活機能分類の相互利用に向けてV章を精査し、ICD-11とICFの関係性を踏まえた活用と方法についてより詳細に検討する必要がある。