Japan Association for Medical Informatics

[3-G-1-4] NDB活用による複数疾患の罹患を考慮した生活習慣病の国民像

中島 直樹 (九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター)

 生活習慣病の有病者数は厚生労働省の国民健康栄養調査などのサンプリング調査により定期的に公表されてきた。例えば2017年の国民健康栄養調査において、日本の成人(1億400万人)のうち糖尿病予備群、糖尿病罹患者はともに1000万人という結果であった。高血圧症、脂質異常症も別々に同様の調査をされているが、疾患別の調査なので糖尿病と高血圧症などの複合罹患の状況や治療内容は明らかではない。単疾患罹患と多疾患罹患とではリスクも異なり、またさらにそれらの投薬による適用外の他疾患への干渉や脳心血管系を中心とする重症合併症発症への効果なども期待されるが、これらについても明らかではない。そこで、AMED満武巨裕班により、6年分の約100憶レセプト、2000憶レコードを用いてNDBを活用して日本人における生活習慣病の複合罹患の調査を行った。糖尿病、高血圧症、脂質異常症について、病名がない場合=0、病名のみ(処方なし)の場合=1、病名および処方有の場合=2とし、NDBの個票ごとに、例えば「糖尿病2、高血圧1、脂質異常症0」と分類した。これにより日本人の成人以上の1億400万人を27群に分けて可視化した。その結果、各群の割合や経年的な変化が明らかとなった。また、群別の地域差、男女差や、糖尿病神経障害、網膜症、腎症、脳心血管系障害などの合併症の経年変化、各疾患の内服治療種別でその経年変化に違いが出るか等をみるための基盤を構築できた。
 一方で、NDBのデータを構成するレセプトのデータ品質は必ずしも高くないことが指摘されている。我々は厚生労働科研の田嶼尚子班で、1型糖尿病のICD10病名だけでは55%である陽性的中率を「Phenotyping」手法を活用して67.5%までに高め(感度78.4%)、これをNDBに適用して日本における1型糖尿病の有病者数を推算した。NDBのようなReal World Dataに対してPhenotypingなどのデータ処理を行うことにより、データの信頼性を向上し可能な限り科学的な活用に導く手法は今後重要になるであろう。