Japan Association for Medical Informatics

[3-G-2-2] 臨床研究を担うアカデミアの観点からの医薬品コードの実際と課題

小出 大介 (東京大学)

 病院情報システムや電子カルテが普及しても、医薬品コードなどはまだ病院ごとの独自コードであることが多く、実態もまだ十分に明らかにされていない。国や医療情報標準化推進協議会(HELICS協議会)ではHOTコードを推奨しているが、メンテナンスや国際的流通を考えると課題もある。臨床研究が活発に実施される大学病院などでは国際共同治験なども増えている現状を考えると、国際的な医薬品コードが採択されることが望ましいが、実際には様々な局面で様々な医薬品コードや名称そのものが使われている。新薬の申請についてCDISC標準として申請データを当局へ提出する場合には、医薬品コードはWHO-DDを用いることになっており、医療機関内の臨床研究のセクションでもEDCにWHO-DDを採用している機関も増えてきているが、まだ全体からみれば少ない。一方、医療機関から当局への副作用報告については、必ずしも電子的に送付することが求められているわけではないので、医薬品の名称そのもので記載していることが多い。製薬企業からの当局への副作用報告については原則電子的報告となっており、医療用医薬品の副作用報告における医薬品コードとしては日本国内では再審査コードが用いられている。WHO-DDと再審査コードは対応付けがなされているので互換性はあるが、医療機関側から当局への副作用報告について医療機関に医薬品のコード化が求められない以上、互換性のメリットは活かされていない。また製造販売後調査にはMID-NETも平成30年度から利用可能となっているが、MID-NETで採用されている医薬品コードはATCコード、YJコード、HOTコードである。このように局面によって使われる医薬品コードが異なることは、医薬品のライフサイクルマネジメントや施設を超えたデータ利用において足枷となることが懸念される。