Japan Association for Medical Informatics

[3-G-2-5] ISO IDMP(Identification of Medicinal Product)国際規格の実装に向けた国際動向ならびに国内導入における課題

佐井 君江 (国立医薬品食品衛生研究所)

医薬品規制情報の国際的な情報交換を可能とする医薬品識別情報モデルとして、国際標準化機構(ISO)にて5つの国際規格(ISO- Identification of Medicinal Product:ISO-IDMPが開発された(2012年11月)。これらの規格は、医薬品規制調和国際会議(ICH) E2B(R3)に規定されている「個別症例安全性報告(ICSR)」の医薬品情報の項目に利用するために開発された経緯があり、現在ICH E2Bにて、ICSRへの導入が検討されている。一方、欧米を中心とした海外規制当局では、ICSRでの市販後安全対策への活用以外にも、広く医療や流通分野での利活用も視野に入れた、長期的なISO-IDMPの実装計画が策定・検討されている。欧州医薬品庁ではISO-IDMPに対応したSPORと呼ばれる4種のマスターデータ整備事業を立ち上げ、現在、一部のシステムから順次稼働を始めているが、将来的には治験から市販後を通しての申請業務や、製品不足時の供給等にも対応出来る体制作りを目指している。米国食品医薬品局では、既存コードの利活用も含め、成分名IDのグローバルな登録システムの開発等も進めている。なお、本邦では、現在、薬事、医療、流通分野において、それぞれ複数の医薬品識別コードが存在するものの、何れもISO-IDMPの要件を満たすものは無く、本邦でISO-IDMPを導入する場合、新たなコード体系の開発または既存コードの活用法を検討する必要がある。近年は、本邦においても、疾患レジストリやMID-NETなどのリアル・ワールド・データを安全対策等に活用する時代へと進みつつある。一方、医薬品コードに関しては、現在のICSRに用いるコードとの間で統一化は図られておらず、相互のデータ活用に制約が生じている。そのため、国内医薬品コードの標準化は重要な課題であり、ISO-IDMPはその候補となる得る可能性がある。今後、規制当局、製薬業界、医療部門の関係者らとの連携のもとに、ISO-IDMPのICSRへの利用とともに、リアル・ワールド・エビデンスへの活用も視野に入れた、ISO-IDMPの国内実装の在り方について、検討を進めていくことが重要と考える。