Japan Association for Medical Informatics

[3-I-1-1] ケア情報共有支援システム【e-ケアメモ】の介護老人保健施設への適用と評価

髙橋 遼平1, 小笠原 映子2, 河内 雅之3, 堀 謙太4, 佐藤 哲大5, 大星 直樹1 (1.近畿大学大学院 総合理工学研究科, 2.高崎健康福祉大学 保健医療学部, 3.介護老人保健施設 緑樹苑, 4.兵庫医科大学 医療情報学, 5.群馬県立県民健康科学大学 診療放射線学部)

【背景】筆者らは,訪問看護において診療情報以外で気づいたことを簡単に記録し共有することを基本コンセプトとするケア情報共有支援システム【e-ケアメモ】の研究開発を進めてきた.システムとしては,写真等の画像を登録して個別にコメントを付加できる画像掲示板を中核とし,療養者ごとにカテゴリを分けて記録し共有する仕組みであり,訪問看護以外でも個別性が要求されるケアにおける簡便な情報共有の仕組みとして応用可能であると考えられる.高い個別性が要求される療養サービスとして,高齢者介護サービスが挙げられる.中でも,介護老人保健施設(以下,老健)では在宅復帰を前提としており,入所者ごとに元の生活環境と合わせた個別性の高い生活支援が要求される.【目的】本研究では,老健においてe-ケアメモを試験的に運用することを通じて,高齢者介護におけるケア情報共有の実態とICTツールの利用可能性について検証を試みる.【方法】A県の老健1箇所にe-ケアメモのシステム一式を設置して2017年11月から2018年5月の約半年間,試験的に運用した.調査として,本実験に参加する看護職,介護職,リハビリテーション専門職,相談員を対象として,介入前,介入中,介入後の無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は,ケア情報共有への評価,および,介入中と介入後のe-ケアメモへの評価とした.【結果・考察】調査対象者73名のうち,介入前,介入中,介入後の全てで回答したのは31名であった.ケア情報共有への評価については,介入前後で概ね変化は見られなかったが,ケアの記録の時間と手間について,一部の職種で違いが見られた.e-ケアメモへの評価については大半が未回答であったが,回答があったものについては概ね好意的であった.また,自由記載において,入所前の生活環境の写真を共有することで環境調整が円滑に進められたことなどが指摘されていた.