Japan Association for Medical Informatics

[3-I-1-2] 地域連携において求められる診療文書とは

坂井 亜紀子1, 武田 理宏1,2, 真鍋 史朗2, 中川 彰人2, 藤井 歩美1, 村田 泰三1, 松村 泰志1,2 (1.大阪大学医学部附属病院医療情報部, 2.大阪大学大学院医学系研究科医療情報学)

近年、地域医療連携システムが急速に拡がっている。当院でも2016年の病院情報システム更新に合わせ地域連携システムであるID-Linkを導入し、2017年3月より診療情報閲覧サービス「阪大病院ネット」の運用を開始した。地域医療連携システムの多くでSS-MIX2標準化ストレージで定義される項目での情報共有が進む一方、サマリ等の診療文書の公開は進んでいない。臨床現場では公開情報を的確に管理する必要があるが、多くの電子カルテシステムでは診療文書を選択的に公開できるようになっていないことが原因と推測される。当院ではACL(Access Control List)ファイルを用いて、文書統合管理システム(DACS)より選択的にPDF形式で保存される診療文書を公開できる仕組みを開発した。運用開始より1年が経過し、臨床現場より公開された診療文書あるいは公開を取り下げた文書を解析し、地域連携において求められる情報の傾向を考察した。2018年5月時点で阪大病院ネットには北摂地域にある4病院、9医科診療所が閲覧施設として参加しており、当院に受診歴のある150名以上の患者が登録されている。全文書のうち、CPR報告書などの17文書は公開不可文書とし、各種検査レポートを中心とする1004文書は既定公開文書としている。一方で退院サマリ、手術記録など主に各診療科により管理されている文書は、診療科ごとの見解に応じて任意で公開することとなっている。診療文書を公開した患者は58名であった。現在、診療文書を公開している患者は23名で48種類の文書、延べ228文書が公開されている。既定公開文書の公開を取り下げた事例は発生していなかった。診療科により任意に公開された文書は診療記録、診療情報提供書・紹介状等が12文書あった。以上より、現時点での運用において規程公開とした文書の選択は適切であったと考えられ、必要に応じで各診療科により診療文書を選択的に公開していることが確認できた。