[3-I-1-3] 奥尻島・函館市間遠隔妊婦健診システムの構築と実際
【はじめに】道南地域の周産期医療、特に妊婦健診受診に際して妊婦・同行親族の「通院負担」が課題となっている。中核都市(函館・小樽等)圏では、医療圏を越えた周辺地域(離島、山間部等)在住妊婦を受け入れており、立地、気象状況、交通手段など、地域特性を踏まえた医療環境の再考と『医療サービス格差』の是正・均衡は喫緊かつ最重要の課題である。【方法】同地域の臨床現場への情報通信技術(ICT)の援用を目途し各種地域医療支援プロジェクトを実施した[2008年度以降]。この内、妊婦遠隔サポートを主眼とする「周産期支援システム」は奥尻島を対象に、下記基盤技術により統合・構築された。1) Cloud型周産期電子カルテ(pEMR)による母児診療情報の共有・連携、2) 生体データ・モニター(血圧、体重、胎児心拍[CTG]・胎動、陣痛図等)、3) Internet TVカンファレンス、4) 超音波診断画像リアルタイム伝送。以上を基盤として『遠隔妊婦健診』を実施した。【結果】2008年より8箇年間の奥尻島在住妊婦[n=151]中、遠隔健診適応数は11名を数え、平均健診回数は11.2回、妊婦健診施行総数[123回/11名]中、遠隔健診施行総数は55回であった。妊婦1名当り平均適用数は5回・遠隔適用率は44.7%に達し、妊娠中期以降(24週~分娩)の健診施行回数のほぼ50%に相当した。【考察】本研究にて構築した遠隔医療支援システムは地域の周産期医療を支援・補完し得ることが示唆されており、かつ妊婦らの様々な受診負荷を縮減していることが明示された。システム構築に際しては地域特性を踏まえ地域住民の「求めること」を加味し、かつ社会設計の観点から具体的ICT技術を包含した医療サービス機能・資源の「面的」資源計画が重要となる。また本研究の基盤的プロトタイプは他科・在宅医療・介護分野等への展開・適用が可能であることも併せ示唆された。