[3-I-1-8] 地域医療情報ネットワークの救急医療利用に向けた取り組み ~あじさいネットの24時間365日運用~
【はじめに】 ICTを使った地域医療情報ネットワークは、拠点病院の診療情報を地域で共有する運用を中心に全国へ普及しつつある。一方、多くのネットワークでは、同意書に基づくアクセス権設定を自院で行っているため、夜間や土日祝祭日に利用できず、救急医療での活用は十分でない。長崎県のあじさいネットは、9万人弱の患者情報を373医療機関で共有するわが国最大規模のネットワークであるが、同様の理由で救急利用は不十分であった。今回、救急医療に向け機能強化したので報告する。【方法】①時間外運用のためのアクセス権外部委託平日の時間外および土日祝祭日専用の時間外用同意書を別途用意し、同時間帯のアクセス権設定を外部委託した。②患者登録のためのPIX/PDQ機能の実装あじさいネットはID-Link(SEC社)とHuman Bridge(富士通社)を採用しているが、長崎大学病院が採用しているID-Linkでのアクセス権設定は、最初に、医事会計システム(以下レセコン)等を使って基本情報を登録する必要がある。外部委託先での同運用は適切でないため、SEC社はPIX/PDQ機能を実装した。③搬送前トリアージ運用の導入長崎大学病院は救命センターと外傷センターを持ち、他院からの救急搬入を行っているが、受入れの判断は、緊急電話の情報のみである。このため、結果的に適応外の搬入が少なくない。このため2017年10月より搬送前にあじさいネットでの情報共有を行い緊急搬入の精度向上を試みた。【結果と考察】搬送前トリアージ運用では8か月間に7例中5例の搬送が適応外と判定された。時間外運用についてはテスト運用を実施中であるが、概ね良好に運用している。時間外運用による24時間365日運用と搬送前トリアージは、地域医療情報ネットワークが救急医療においても有効でこの価値をさらに高めるものと思われる。今後県全体での調剤情報共有を予定しており、本情報も同様に利用できるためさらにその価値が高まるものと期待される。