[3-I-2-3] 開発途上国の医療機器管理における情報技術の適応
【はじめに】近年、国際的にSDGs(Sustainable Development Goals)における課題解決やUHC(Universal Health Coverage)達成に向けての取り組みが行われている。しかし、開発途上国諸島地域の医療機関においては、医療機器の運用において安全性、衛生面などで重大な問題を抱えている。【方法】筆者がJICAのプログラムで派遣されたソロモン諸島第二の規模を持つギゾ病院においては、医療機器の保守、管理を専門的な教育を受けたことのない電気技師が行っており、更には各機器の利用状況や故障状態などの把握、管理がなされていなかった。そこで、電気技師に対して 対面指導による基本的な医療機器に関する教育を行った。また、病院内で管理が必要な医療機器の台帳を作成し、定期点検を効率良く行うため、台帳情報と点検情報についての医療機器管理データベースを作成した。台帳やデータベースは単独のノートPC上のオフィスソフトによって実装した。【結果】台帳やデータベースの導入により定期点検が実施できるようになった。その結果、管理対象機器115台のうち、破棄相当のものが4台、修理が必要なものが5台あることが分かり、廃棄や修理を行い、安全な医療機器の使用が可能となった。そして、定期点検時の機器清掃により、全体の95%の機器の汚染状態が改善された。【考察】開発途上国諸島地域の医療機関においては、初歩的な情報技術の導入によって医療機器の管理状況を大幅に改善することができた。このような地域では医療機器や情報機器の導入などハードの側面では先行するが、それを運用する人への教育というソフトの側面では大きく後れている。したがって、医療機器管理データベースと連携したeラーニングシステムの導入が有効であると考えられる。ただし、eラーニングシステムは高速なインターネット接続に依存したものではなく、例えば定期船によって運ばれるオフラインでのデータの交換といった通信環境でも利用可能なシステムが必要である。