Japan Association for Medical Informatics

[3-K-2-1] 病院情報システムの診療支援機能の施設間差異に潜むリスクを体系的に把握するための概念モデルの導出

津久間 秀彦, 田中 武志, 池内 実 (広島大学病院医療情報部)

【背景】病院情報システム(HIS)に様々な診療支援機能(以下支援機能)が導入されているが一般に施設ごとに実装は異なる。一方、掛け持ち勤務や勤務地を変更する医療職は多い。そのため、支援機能の差異が勘違い等の医療安全のリスク要因となる可能性に留意すべきだが、これまで体系的な整理・分析は行われていない。そこで筆者らは文献調査により、診療看護過程に関係する支援機能の中からリスクとなりうる事例を抽出して、第22回医療情報学会春季大会で報告した。【目的】春季大会の報告は特定の事例に注目したものであったが、支援機能のバリエーションは幅が広く、また時間経過とともに同じ施設内でも実装が変化するため、支援機能そのものを施設間で比較して差異とリスクの関係を把握するのは困難である。そこで本研究では(1)支援機能を分類するための概念モデルを構築し、(2)施設間差異とリスクの関係を把握することを目的とする。【方法】(1)ある行為の正しい実行までには、論理的に「①行為を行うべきことを知っていた/②行為の実施を適切なタイミングで認識した/③行為を正しく実施できる能力を有していた/④実際に正しく実施できた」の4要件が必要である。構築する概念モデルは「4要件のどこかでミスを犯す/能力面に問題がある、または量的に実行不可能な」医療者に対する支援機能を分類する構造とした。そのうえで、医中誌Webで抽出した支援機能の文献情報から、支援の形態と機能の発動方法を類型化した。(2)(1)で類型化した機能が2施設間で「ある/ない/機能が異なる」場合を想定した思考実験で、リスクの有無とタイプを整理した。【結果】(1)抽出した130編の文献から支援形態として「チェック・アラート/リマインド/注意喚起/候補の提示/必要情報の集約/入力省力化/複合型」等が抽出された。また、発動方法は大きく「Pull型/Push型/複合型」に分類された。(2)特に注意を要するのは、機能が日常的に目に見えないPush型の支援機能であった。