Japan Association for Medical Informatics

[3-K-2-3] 頭痛問診情報の対話型収集システムのプロトタイプ開発

久保 晴輝1, 井田 有亮2, 大江 和彦1,2 (1.東京大学大学院医学系研究科, 2.東京大学医学部附属病院)

初診患者の主訴について問診によって詳細な臨床情報を収集することは初期診断にとって重要である。診断支援システムによりこれをある程度自動化すれば、非対面診療や診察前の事前問診における情報収集が効率良く行えるが、音声認識と発話機能を備えた対話型の問診情報システムはまだ実用化できていない。そこで、本研究では患者の訴えのみが主な情報源となる痛みとして、頭痛を対象とし、頭痛に関する発言を対話により聞き出して、その詳細な臨床情報の収集を行うアプリケーションシステムの開発を目的とした。頭痛に関する臨床情報の属性を性状、部位、発症及び持続時間、増悪傾向、既往、痛みの表現、契機及び随伴症状の7種に区分し、それぞれについて会話における患者表現を含む文を作成し、さらに研究協力者からも列挙してもらう方法で表現データセット(534件)を作成した。次にこの表現データセットに対してBIO法によりアノテーションを行なった。このアノテーションされたデータセットを使用し、機械学習の手法の一種であるConditional Random Fields(CRF)を用いて、患者の頭痛に関する会話表現から前記7種の頭痛属性情報を取得するアルゴリズムを開発した。開発された学習済みアルゴリズムを評価するため、学習に用いなかった会話表現を入力として前記7種の頭痛属性情報をどの程度取得できるかをK=5のK-fold法により評価した。その結果精度0.72、再現率0.74となり、改善が必要な結果となった。学習データセットの件数が圧倒的に不足していると考えられるため、クラウドソーシングの手法により規模の大きい学習データセットを作成して性能を向上させたいと考えている。こうして一定程度性能を向上させた後に、対話機能を持つ人型ロボットやスマートスピーカー、音声認識機能を持つスマートホンやタブレットPCに実装することで遠隔医療で活用できる可能性がある。また胸痛、腰痛、腹痛などといった様々な痛み症状の情報収集に発展させることを考えている。