一般社団法人 日本医療情報学会

[4-A-2-2] 人工知能による総合診療診断支援システムの開発(自治医科大学 永井良三:AMED課題管理番号16lk1010019h0001)

永井 良三 (自治医科大学)

医療現場、特に僻地を初めとする地域医療には幅広い疾患に対応できる診療体制が求められている。総合診療医の養成はその対応策であるが、そのための医学教育も進んではいるが、増大する医学知識に必ずしも対応できていない。
一方、日本内科学会をはじめとする学会で報告される症例報告は我が国独自の貴重な情報データベースである。抄録は500字程度であるが、フォーマットがほぼ統一され、かつ診断が確定している症例であり、これを言語処理して機械学習できれば、総合診療診断システムに貢献できると考えた。更に症例報告の抄録から構造化された知識を抽出し、診断支援システムが用いる知識ベースとして活用する方法論が確立できれば、毎年追加される症例報告を対象として、今後も継続した知識更新が可能となる。
本研究においては、総合診療医の臨床経験に基づく暗黙知を多くの医師が利用できる形式知に変えるため、最新のICTを活用した「人工知能による総合診療診断支援システム」を開発している。その開発過程において必要となる教師データについては、我が国独自の症例報告集や医学医療用語集のデータベースを活用する。かつ医療産業におけるビッグデータ解析やAI技術の普及・導入にも寄与する。
具体的には、患者の症状・所見から想定される疾患リストをその理由と共に提示する診断支援推論アルゴリズムを開発し、診断支援情報提示システムとして実装する。教師データ収集・作成の効率化のために日本内科学会と日本循環器学会の症例報告集との連携を行い、日本内科学会症例報告(4.5万症例)および日本循環器学会(2.5万症例)について、診断および症状をデータベース化する試みを行っている。
さらに、症例文章自動データベース化技術を開発することにより、教師データ作成の労力を削減する試みもなされている。