一般社団法人 日本医療情報学会

[4-B-1-5] パーソナルデータ利活用のためのブロックチェーン技術の応用可能性

水島 洋 (国立保健医療科学院)

 希少疾患の患者登録に関する研究を行ってきた中で、国による悉皆性のあるデータ収集や、研究成果のデータレポジトリとともに、患者の意思で自分の医療情報を随時リアルタイムで管理できるような仕組みの必要性を感じてきた。それを解決する手段としてブロックチェーン技術に注目し、医療ブロックチェーン研究会を昨年立ち上げて国内外におけるブロックチェーン技術の医療応用に関する情報交換を行うとともに、ブロックチェーンのテストベッドを用いてその可能性に関する検討を行ってきた。
 ブロックチェーン技術は金融系における仮想通貨やポイントなどの利用が話題になっているが、分散台帳やスマートコントラクトなどの仕組みを活用することで、海外では医薬品のトレーサビリティ確保や、患者によるデータ管理などでの応用が始まっている。実際エストニアにおいてはブロックチェーン技術を活用した電子政府としてのシステムが稼働して、透明性のある個人情報管理や業務の省力化などを実現している。
 一方、本年の次世代医療基盤法の施行とともに、パーソナルデータの利活用が話題になっているものの、認定事業者による匿名加工や、匿名加工医療情報の提供についての検討が中心となっており、その仕組みについての議論は少ない。また、病院から提供された医療情報に対するインセンティブは現状、医療機関やデータ収集会社にしか渡らず、新しい仕組みの中でも認定事業者などから活用された際に支払われる対価が患者自身に(匿名化された状態で)戻ることは難しい。
 国による医療機関からのデータの収集とともに、患者/国民によるデータ提供とその管理に関しては、ブロックチェーン技術との相性が良く、これを応用することによって効果的なシステム構築が可能と考えて、現在実証実験を準備している。
 ブロックチェーン技術は今後医療以外の分野とも連携して、データ利活用のための中心的なインフラとなるように期待している。