Japan Association for Medical Informatics

[4-C-2-2] 医療においてトレーサビリティを確立することの重要性

落合 慈之 (東京医療保健大学)

我々が手にし得る全ての製品・商品を対象に識別子を付け、それら一つ一つを識別可能にすることをUDI (Unique Device Identification) という。識別子は人が目視できることもさることながら、器械で自動的に読み取れてこそ作業の能率は上がる。このため識別子はバーコード等で表示される。バーコードをバーコードリーダで読むほか、Suicaのように電子タグを利用することで、誰が、いつ、どこで、何を、誰に、どのように(いわゆる5W1H)といった、モノの移動にかかるトレーサビリティを自動的に確保する技術をAIDC (Automatic Identification and Data Capture) technology という。製品に標準化された識別子を付し、その識別子を基にアクセスしさえすれば、その製品に関する詳細な情報を記したデータベースも用意されるとき、これをUDI systemという。コンビニやスーパーに代表される流通業界をみればUDI systemが見事に機能していることは一目瞭然である。幸い、我が国では世界に先駆けて医薬品や医療機器/材料の多くにもメーカーによりGS1コードが識別子として付けられている。病棟業務をはじめとして、医療の現場に関わるスタッフのストレス等を考慮したとき、点滴の調剤ミス・誤投薬・患者間違い(5 Rightsの不徹底)の予防、保険請求業務や在庫管理や受発注業務の合理化のためにも、医療機関がこれら技術を活用しない手はない。我われ医療業界は、今こそ、もっと他業界にその業務プロセス改善のための術を学ぶべきである。医療のICT化、医療ビッグデータの利活用が叫ばれても、そのためのデータ入力や出力が紙ベースやFaxベースで行われているようでは、成果は望めない。AIDC technologyの活用によるトレーサビリティの確立こそ喫緊の課題である。