一般社団法人 日本医療情報学会

[4-C-2-3] GS1標準バーコードを医療情報システムで活用するその前に~ 福井大学附属病院の事例から導入の鍵を探る ~

笠松 眞吾 (福井大学 医学部)

【背景】手術や処置で使用する医療機器を単品管理し安全管理、トレーサビリティの確保と手術物品管理システム構築が手術医療の実践ガイドラインに示されている。また、FDA及びEUでは、強制力を持った指令として手術器具のUDI(Unique Device Identification;機器固有識別子)による識別システム規制が進んでいる。しかし本邦に
おいては、手術用鋼製小物の個体使用履歴管理は、依然として普及が進んでいない。
【目的】手術の質と安全を確保するには、総合的な手術安全マネジメントシステムの早期導入が必須である。本研究では、GS1コードのスキャン時間を指標として用いることで、個々の作業時間を算出し、品質管理的な導入効果とコスト管理的な経済的合理性を明らかにする。
【方法】福井大学医学部附属病院では、2014年に総合滅菌管理システムを導入した。GS1国際標準に適合した管理を行うため、病院の事業者コードを取得した。手術用鋼製器具約32,000個に機器固有識別子としてGS1-DataMatrixコードを刻印しスキャンによる組立支援システムを構築した。各種装置とは、IoT端末等を用いたリアルタイム監視を行った。約1,000箇所の位置情報タグとしてGLN(Global Location Number)と携帯情報端末を用いた手術準備作業の工程改善を行った。
【結果】完全運用後の2017年では、導入前の2014年に比べて、手術件数あたりの組立ミスの割合は、3,054ppmから175ppmとなった。同時に組立工程に係る労務時間は、年間約4,000時間、手術カート準備作業は、年間971時間、計4,971時間の効率化を達成した。
【考察】総合滅菌管理システムは、手術医療におけるトレーサビリティの確保だけでなく、手術準備作業の労働生産性の向上に効果があることが明らかになった。