Japan Association for Medical Informatics

[4-C-2-4] 院内・院外統合物流システムの構築

美代 賢吾 (国立国際医療研究センター)

2017年の医療機器リコール数は、"Class I" 7件、"Class II" 350件、"Class III" 41件となっており、これらの製品を回収するために、企業・卸のみならず病院も多大な労力を使っている。病院の中では、多品種・少量かつ不足すると診療に大きな影響を及ぼす医療材料の管理負担だけでなく請求漏れ防止のための入力負荷や多重の確認が行われている。そして、正確な消費データが集積されないために、医療政策・制度に十分に反映されない状況が続いている。
製造から消費まで、医療材料がどのように流通し、誰に消費されたかを把握できれば、これらの問題は解決する。先進的な病院では、すでに院内のバーコード活用が進んでいるが、多くの病院に普及するには至っていない。そこで、国立国際医療研究センター(NCGM)では、2017年より、「患者安全と院内・院外最適化を追求する医療材料統合流通研究会」を開催し、卸・EDI事業者・SPD・コンサルタント・電子カルテベンダーの参加のもと業種横断的に取り組み、ボトルネックの把握とその解消を探っている。
研究会では、従来からの医療安全の視点からトレーサビリティとしてのGS1コードの活用だけでなく、業務改善・業務負担軽減の視点を重視したシステム構築を進めている。具体的には、バーコード入力負荷軽減のための電子カルテ機能の開発、各部門ごとに異なる物品マスタの統合化の検討、自動化・省力化のためのシステムの検討である。さらに、医療材料が実際にどのような患者に使用されたか、患者の臨床情報と医療材料の使用情報を統合した「医療機器トレーサビリティデータバンク」の開発を進めており、これらを匿名化し安全な形で、提供することで、新しい医療機器の開発等の医療分野のイノベーションに貢献することを検討している。本シンポジウムでは、これらNCGMの取り組みを紹介する。