[4-C-3-4] 地磁気を利用した病院内位置測位手法の検証
【はじめに】 昨今、医療現場において人やモノの見える化により、業務効率の向上と医療事故の未然防止につなげる取り組みが始まっており、技術的手法としてWi-Fi、BLE(Bluetooth low energy)、IMES(Indoor Messaging System、屋内GPS)、地磁気(Geomagnetic以下、GM)等がある。当院の看護師はスマートフォンを業務で利用しているため、Wi-FiやBLEの利用が一般的であるが、この場合は相互干渉等により測位精度に影響する可能性がある。また一般的な端末はIMES非対応である。そこで本研究では、一般的なスマートフォンで利用可能であり、前述した欠点のないGMによる屋内測位の利用可能性を検証することを目的とした。【方法】 GM単独、Wi-Fi、BLEとの併用による位置測位精度の比較検証を一般病棟(52床)で行った。Wi-Fiは既存のインフラを利用、BLEはBeaconを20台設置、GMは磁界マップとのパターンマッチングを行うGiPStech社の屋内測位技術を採用した。検証ルートを(1)各手法との併用における病棟を網羅するルート7本、(2)GM+BLEにおける業務を想定したルート3本設定した。【結果】 (1)の平均測位誤差はGM単独、GM+Wi-Fi、GM+BLEで7.62m、3.19m、2.60mで(2)の測位誤差は3.57m、2.92m、3.96mだった。【考察】 今回の検証において特定の場所の精度に大きな差が見られた。 (1)のエレベーターホール付近でGM単独の平均測位誤差が12~18mと安定していなかった。これはエレベーターが巨大な磁性体で周辺の磁界が大きく変動するためと考える。(2)の平均測位誤差は3.48mで、病室等でのベッドやワゴンの移動による影響は少なかった。磁界が変動する場所では他方式を補完的に使用することで測位精度を保つことができることから、電波の影響や干渉を最小限に抑えたい環境下において、GMは有効な屋内測位手法であるといえる。